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「三郎」
委員会から帰ってきた雷蔵が、ふすまを開けるなり三郎の前に背を向けて座り込んだ。
「雷蔵?どうしたの。」
「頭巾の結び目にね、髪を巻き込んじゃっているんだ。解いてくれないかな。」
見ると成程、後ろ髪が絡まっている。
柔らかい髪を除けて結び目を慎重に解いた。癖がついて随分乱れてしまったので髪紐をほどき、髪を新しく結び直してやる。普段頭巾で隠された白いうなじが現れた。
触れたくなる衝動をなんとかこらえ、頭巾も綺麗に巻き直す。今深く触れたら、夕飯に間に合わなくなりそうだ。
「ここまできっちりやらなくて良かったのに」
「いいじゃないか、すっきりしたろう」
それにできるだけ長く触れていたかった。こんな些細なことでもずっと。
心の中で付け加えながら、目の前にある薄茶の髪を手櫛で梳く。ふわふわしていて、暖かかった。
「ああ、ありがとう」
「にしても偉いぞ雷蔵。引きちぎろうとしなかったんだな」
おおざっぱな雷蔵は少しくらい髪が絡まっても気にしない。良くぞ手を伸ばさなかったものだ。
「あぁ、立花先輩に止められたんだよ」
「立花先輩に?」
図書室で本の整理をしている時に、後ろを通った仙蔵が指摘したのだそうだ。そのまま後でというわけにもいかず、その場でほどいてしまおうとしたが、なぜか止められた。
髪に誇りを持っている仙蔵には、雷蔵の乱雑な手は我慢ならないそうだ。ならばと頼んでみたら今度は怒られた。
「先輩にね、『忍が易々と他人に急所である首筋を晒すのではない。こいつになら命を預けられると思うほど信頼した者に頼みなさい。』って注意されちゃって。あぁ、なるほどなぁって思ったから委員会の仕事終わるまで放っておいたんだ。」
雷蔵は話しながら借りてきていた本を机に片付ける。そして夕食に行こうと立ち上がって促されるまで、頭の中は思考停止していた。
え、あれ?ちょっと待て立花先輩こうなることわかってて雷蔵に言ったろう。なんだこれそうかこれあれか。この間潮江先輩が夜の自主訓練に出るのを阻止するために部屋の外に用心縄を仕掛けるの協力したお礼か。足引っ掛けた潮江先輩を馬鹿にしながら部屋に引きずり込んでいたなぁその時の礼なのか。
っていうかそうじゃなくて、雷蔵・・・!!?
とりあえず衝動耐えてよかった!と安堵している場合でもなくて、
今度はぐるぐる考えている間につい歩む速度を緩めてしまっていたらしい。気付いたら手を引かれ、先導されていた。
それがまた愛しくて仕方ない。
食堂の入り口に到着する頃には、雷蔵の背中を抱きしめて顔を肩に押し付けていた。この頬にこもる熱はどうしてくれよう。
胸の奥が熱くて熱くてどうしようもない。
嗚呼、心というものはちゃんとここにあるのだな。
***
そんな声が聞こえた。
冷静な自分よ、頭の片隅になどいないでさっさと戻ってきてください。
善法寺先輩と雷蔵が仲がいいといいなーと思い、そうしたら派生で三郎が立花先輩と仲良くなりました。
天才肌タッグは敵なしだと思います。三郎は雷蔵に弱いけれど。
あ、仙蔵は伊作に弱いと思います。
上級生同士が仲良いっていいですよねvv
そして11月22日は『いい双忍』の日。
2008.11.22.
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