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三郎君の開発推奨週間+α
「ん、はぁ、っ」
夜も更けてあたりが闇に飲まれる時分、ある一室では障子戸の隙間から濡れた音がひっきりなしにこぼれ落ちている。
「も、やださぶろ、そこばっか・・・っ!!」
暗闇の中に浮き上がるのは夜着の白。
組み敷かれた雷蔵の身体の皮膚の上を濡れた舌が好き勝手に滑っては刺激を送るという行為を、三郎は先ほどから飽きることなく繰り返していた。
「だめだよ雷蔵。まだぜんぜん感じてなんていないだろう?」
暗闇の中ぷつりと浮かび上がる小さな突起を舌先で捉え、先端を優しくつつく。かぷりと口に招き入れるとぢゅっという音と共に強く吸い上げた。
「ひ!ぁっ、感じてるよっ、きもちい、から・・・っ!」
「うーそ、なら何故全くイく様子がないのかな?」
夜着はまだ身体に纏っている。それどころか下帯も腰紐さえも付けたままで、袷だけがくつろげられていた。指摘されたのはその白い布たちに覆われた部分。下帯を押し上げて堅くなっている様子はうかがえるが、達するにはまだまだ刺激が弱いようだった。
ことの始まりは一刻ほど前。消灯時間が迫り灯明台の火が最後の役目を果たそうとほそぼそと燃え揺らぐ光の中、三郎が背に覆い被さるようにして抱きついてきてからだった。
いつものことなので気にせずに明日の予習を続ける。関心を向けられなかったのが不服なのか腹に重なるだけだった手のひらが、だんだん肌を撫でるように蠢き始めた。
そして遂に袷の隙間から手を差し入れて直接肌を滑ったとき、肩を震わせ耐えていた雷蔵が後ろを振り返った。
「っ、くくっ、あははっ!くすぐったいよ三郎!」
「・・・くすがられたいわけではないんだけれどね、雷蔵。」
意気消沈して肩口に頭を押しつける三郎をそのままに、大味に滑らした筆を文机に置く。手が空いていよいよ構ってもらえることを察知したのか、足まで使ってより強く抱き込まれた。
「暑いよさぶろー」
「俺は寒いのですらいぞー」
心が!
これはまいった、かなーとのんびりと思いながら、雷蔵は自分の髪を模したその頭をぺしりと叩いた。
「くすぐったいものはくすぐったいのだから笑うしかないだろう。だいたい、人が机に向かっているときにちょっかいを出すお前だってどうなんだ。」
「大人しくしてたよ」
「手が喧しかったんだよ」
そこで再び手のひらが体の輪郭を辿り始める。一度火が着けばどこを触れられても気持ち良いと感じられるが、平常の雷蔵では肌を触れられてもこそばゆさや温かみを拾うだけだ。
布の上からとっかかりを指先に感じると、軽くそこを引っかいてみる。しかし、ふっと鼻から息が抜けたかと思えばくすくすと小刻みに揺れる振動が腕の中で広がるだけであった。
「これは由々しき自体なのではないのか。」
「はあ?どこ、が・・・くくっ」
まだこそばゆさが収まらないのか、語尾に笑みが混ざる。
「だってそうだろう。気持ち良いことをしているときにこそばゆさを感じてしまうのは雰囲気やら気持ちやらを台無しになってはしまわないか。」
「そんなに気にしなくても、そういうことをしているときはそう気にならないよ。」
話の内容からは結びつかないほど大真面目な視線で顔を覗く。
「しかし、練習すればつまりもっと最中でも気持ち良くなれるわけだろう?雷蔵だって好きだろうこういうの。」
「そりゃあ嫌でやるものではないし、気持ち良いのは好きだけれど・・・」
「なら。」
急に背に触れていた熱が失われひやりとした布の上に横たわる。視界に飛び込んできた天井を認識したときには楽しそうな表情を浮かべた自分の顔が滑り込んできた。
「なにごとも練習あるのみだよ、雷蔵」
お誂え向きに、灯明台の油が切れた。
「ひ、ぅやっあ!」
歯を立てて乳首を挟み、ぐっと引っ張ってみる。随分快楽を拾うようになったらしい雷蔵は、肩を震わせて喘いだ。もう両方とも粒が熟れて闇夜でもわかるほど赤く腫れ上がっている。思わずくすりと笑うと、その吐息だけで感じるのか背中でがりっと肌を削る音がした。
「も、やだ三郎っ!やめ、」
「ダメだよ、胸だけでイけるようにならなきゃ、ね?」
宥めるために目元や頬に口づけを落とす。するとまるで縋るような仕草で唇を重ねられた。そのままで好きにさせることにすると焦れたのか、押しつけるだけだったその奥から舌が開くことを請う様に伸ばされて唇の裂け目をつつく。なので望み通りに招き入れてやった。それでも自らは動かない。涙目で睨まれたがそれには笑みを返した。後頭部に腕が回りより深く重なるように引き寄せられる。懸命に三郎の舌に絡ませ、普段施されることを辿るように雷蔵は彼の口腔を貪った。
混じりあってどちらのものかわからなくなった唾液が口端から溢れでる。いつも三郎がするように、最後に舌を吸い上げて重ねた唇を離そうとした。その毎回を覚えていた雷蔵を愛しく思いつつ、休ませていた手元を再び動かす。爪を立てて粒をひっかいた。
「ひっ!」
痙攣した弾みで離れたその唇から覗く名残惜しそうに伸ばされた舌を、今度こそ自ら噛みつくように捕らえる。
苦しそうに息を洩らしたが、三郎からの口腔への愛撫に微笑んだ雷蔵は再び腕に力を込めた。手は胸への刺激を止めないまま、雷蔵の好きな口蓋を擽る。二カ所からの甘い疼きに無意識に腰が揺らめいていた。すると唐突に重なっていた唇が離され、距離が生まれる。
「なにやっているの?」
「ふ、え・・・?」
なにと言われても雷蔵には何の心当たりもない。三郎はにこりと笑って、押し当てられていた熱を膝でにじった。
「ひゃあ、あっ!」
「いま自分で私の腿に擦り付けていたじゃない。触れてもらえないからって、こんな方法で自慰でもしようとしたんだ?」
はしたない。
耳元で、身体のその奥にまで届くように囁く。びくりと跳ねたその拍子に、未だ接触していた腿で再び刺激が生まれた。
「ふふ、そんなに私の足がいいの?でもダメだよ。今日はここには触れないままイってもらうんだからね。」
可哀想な可愛い雷蔵。首を一生懸命横に振りながら許しを請うている。けれどそれには応えないまま、三郎は彼の身体を起こし、背後へ回った。足を絡ませ閉じられないようにし、腕の下から手を胸に回す。ちょうど首元に触れた唇が、うなじの頭巾の結び目で隠れるかどうかという部分を強く吸った。
肩に顎を乗せ、手元を覗き込みながら両方を苛める。すでにぴんっと突きだしてしこりの出来た粒は、指の腹の下で面白いほど堅くなっていた。
「も、三郎やめろって・・・っ!」
「だーめ。もうちょっとだから、ね?」
未だ下帯さえ解かれていないそこは、きつそうに立ち上がって一部分、色が変わっていた。尻の割れ目にも食い込んでいるのがわかる。
「・・・っ、お前だって、もう限界なんじゃないのかっ!?」
挑発するように後ろへ体重をかけられ、圧迫される。雷蔵の腰にはすでに熱く立ち上がった三郎自身が押しつけられていた。
「ーーーっ、まだ大丈夫だよ。なに、意識して感じちゃったの?」
触れるだけだった熱さが指摘されたことで動き出す。腰の下部に押しつけるだけで肌にさえ触れていないというのに、その上下に擦られる感触に身体の奥を削られる快楽の記憶を取り戻してしまい、求めるように最奥が疼いた。
さらにその振動で身体が動き、床と下帯が擦れ合ってしまう。木綿の内側で触れてほしいと望んでいたそれが、少しの刺激も逃さずに拾い上げた。
「ふぅっ!あ、ぅ」
浅ましい、そう思うのに一度快楽を自ら生み出す方法を見つけてしまった身体は止まろうとしない。後ろに腰を押しつけ、尻を床に擦り付けるように身体が揺らいだ。
「あーあ、私の足がなくなったら今度は下帯?こんなので感じちゃうんだ雷蔵は。」
耳に歯を立てられ、次いでべろりと舐め上げられる。ふるりと震えて、胸を弄くっていた腕に爪を立てた。
「三郎、さぶろ、もっ、もう無理、イかせて・・・っ!」
身体の中を縦横無尽にかけ巡る出口のない熱の代わりのように、目から視界がなくなるほどの涙が溢れでてくる。ぼたぼたと滴が落ち、喉からは嗚咽がこぼれた。
止まらないそれに呼吸を繰り返して落ち着くしかなかったとき、胸の前で動きを止めていた腕が交差し、そっと抱きしめられた。
「ごめん、ごめん雷蔵、やりすぎたね」
「さ、さぶろ・・・っ」
イっていいよ、とわざと強く感じるように下帯の結び目をぐいっと引っ張りながら解く。足が痙攣した。
解いた下帯の下から溢れた先走りがとろりと糸を引く。しかし未だ達してはいなかった肉棒は、圧迫から解放されたことでふるりと頭をもたげた。
それに手を伸ばすと、その前に阻まれる。
「らいぞう?」
「前は、いい・・・」
でもつらいだろうと首を傾げると、髪が擦れ熱い吐息が零れる。しかし雷蔵は首を振った。
「それはいいから、・・・入れろ」
一瞬なにを言われたかわからなかった。けれど必死に首を後ろに向け、涙に塗れた瞳がこちらをねめつける。頭で音が意味をなしたとき、気づいたら先走りを拭っていた左手がその指をつっこんでいた。
おざなりに慣らして指を抜き去り肉棒をあてがう。ずさんなものだったというのに、そこはひくひくと物欲しそうに開閉した。
「ごめん、雷蔵。らいぞ、もう」
「うん、うん、いいよ、いいからっ」
はやく、という言葉が出るか否か。認識する前に熱が身体を切り開き、言葉はなにとも表さない声となった。痛みは感じたが、構ってなどいられなかった。
すべて収まりきった楔が頃合いをみて動き出す。卑猥な水音にしこりを穿たれる刺激、声がかすれて朦朧となってきた時、脳裏でぱちぱちとはじけ、意識は落ちた。
「今度こそ、胸だけでイこうね?」
腹に力を込めてみたが、効果はあっただろうか。
「絶対にいやだ!」
「えー?」
壁際まで追いつめられながらも断固拒否の体制で雷蔵は三郎をにらみつける。
「あんなこと二度とやるものか」
あんなこととはもちろん胸だけしか刺激を送られなかったという狂わしい一夜のことだ。実はあの後、雷蔵が気を落とした後も胸への愛撫は続けられ、空が白み再び意識が戻ったとき、己の胸は痕やらなにやらで真っ赤に染まり、自身はといえば解放されるのをいまかいまかと待ちわびていた。あまりにもゆるやかな身体の変化に意識が拾うことはなかったらしい。結局その後も受け入れることとなった。
「まああわてなくても。確かめるだけだよ。」
「確かめる?なに・・・ひゃあ!?」
伸びた腕がおもむろにはずすことなく突起が隠れている布地をひっかく。自分でも信じられないほど身体が反応した。
「うん、いい感じ。身体は覚えてくれたみたいだね。」
ここが気持ちいいんだってことを。一晩掛けた甲斐があったよ。
にこりと微笑む顔が恨めしい。
けれどもう胸だけを愛すことはしないよなんてバカなこと囁く声に、それでもつい許してしまう自分の方が恨めしかった。
09.08.06.
「ん、はぁ、っ」
夜も更けてあたりが闇に飲まれる時分、ある一室では障子戸の隙間から濡れた音がひっきりなしにこぼれ落ちている。
「も、やださぶろ、そこばっか・・・っ!!」
暗闇の中に浮き上がるのは夜着の白。
組み敷かれた雷蔵の身体の皮膚の上を濡れた舌が好き勝手に滑っては刺激を送るという行為を、三郎は先ほどから飽きることなく繰り返していた。
「だめだよ雷蔵。まだぜんぜん感じてなんていないだろう?」
暗闇の中ぷつりと浮かび上がる小さな突起を舌先で捉え、先端を優しくつつく。かぷりと口に招き入れるとぢゅっという音と共に強く吸い上げた。
「ひ!ぁっ、感じてるよっ、きもちい、から・・・っ!」
「うーそ、なら何故全くイく様子がないのかな?」
夜着はまだ身体に纏っている。それどころか下帯も腰紐さえも付けたままで、袷だけがくつろげられていた。指摘されたのはその白い布たちに覆われた部分。下帯を押し上げて堅くなっている様子はうかがえるが、達するにはまだまだ刺激が弱いようだった。
ことの始まりは一刻ほど前。消灯時間が迫り灯明台の火が最後の役目を果たそうとほそぼそと燃え揺らぐ光の中、三郎が背に覆い被さるようにして抱きついてきてからだった。
いつものことなので気にせずに明日の予習を続ける。関心を向けられなかったのが不服なのか腹に重なるだけだった手のひらが、だんだん肌を撫でるように蠢き始めた。
そして遂に袷の隙間から手を差し入れて直接肌を滑ったとき、肩を震わせ耐えていた雷蔵が後ろを振り返った。
「っ、くくっ、あははっ!くすぐったいよ三郎!」
「・・・くすがられたいわけではないんだけれどね、雷蔵。」
意気消沈して肩口に頭を押しつける三郎をそのままに、大味に滑らした筆を文机に置く。手が空いていよいよ構ってもらえることを察知したのか、足まで使ってより強く抱き込まれた。
「暑いよさぶろー」
「俺は寒いのですらいぞー」
心が!
これはまいった、かなーとのんびりと思いながら、雷蔵は自分の髪を模したその頭をぺしりと叩いた。
「くすぐったいものはくすぐったいのだから笑うしかないだろう。だいたい、人が机に向かっているときにちょっかいを出すお前だってどうなんだ。」
「大人しくしてたよ」
「手が喧しかったんだよ」
そこで再び手のひらが体の輪郭を辿り始める。一度火が着けばどこを触れられても気持ち良いと感じられるが、平常の雷蔵では肌を触れられてもこそばゆさや温かみを拾うだけだ。
布の上からとっかかりを指先に感じると、軽くそこを引っかいてみる。しかし、ふっと鼻から息が抜けたかと思えばくすくすと小刻みに揺れる振動が腕の中で広がるだけであった。
「これは由々しき自体なのではないのか。」
「はあ?どこ、が・・・くくっ」
まだこそばゆさが収まらないのか、語尾に笑みが混ざる。
「だってそうだろう。気持ち良いことをしているときにこそばゆさを感じてしまうのは雰囲気やら気持ちやらを台無しになってはしまわないか。」
「そんなに気にしなくても、そういうことをしているときはそう気にならないよ。」
話の内容からは結びつかないほど大真面目な視線で顔を覗く。
「しかし、練習すればつまりもっと最中でも気持ち良くなれるわけだろう?雷蔵だって好きだろうこういうの。」
「そりゃあ嫌でやるものではないし、気持ち良いのは好きだけれど・・・」
「なら。」
急に背に触れていた熱が失われひやりとした布の上に横たわる。視界に飛び込んできた天井を認識したときには楽しそうな表情を浮かべた自分の顔が滑り込んできた。
「なにごとも練習あるのみだよ、雷蔵」
お誂え向きに、灯明台の油が切れた。
「ひ、ぅやっあ!」
歯を立てて乳首を挟み、ぐっと引っ張ってみる。随分快楽を拾うようになったらしい雷蔵は、肩を震わせて喘いだ。もう両方とも粒が熟れて闇夜でもわかるほど赤く腫れ上がっている。思わずくすりと笑うと、その吐息だけで感じるのか背中でがりっと肌を削る音がした。
「も、やだ三郎っ!やめ、」
「ダメだよ、胸だけでイけるようにならなきゃ、ね?」
宥めるために目元や頬に口づけを落とす。するとまるで縋るような仕草で唇を重ねられた。そのままで好きにさせることにすると焦れたのか、押しつけるだけだったその奥から舌が開くことを請う様に伸ばされて唇の裂け目をつつく。なので望み通りに招き入れてやった。それでも自らは動かない。涙目で睨まれたがそれには笑みを返した。後頭部に腕が回りより深く重なるように引き寄せられる。懸命に三郎の舌に絡ませ、普段施されることを辿るように雷蔵は彼の口腔を貪った。
混じりあってどちらのものかわからなくなった唾液が口端から溢れでる。いつも三郎がするように、最後に舌を吸い上げて重ねた唇を離そうとした。その毎回を覚えていた雷蔵を愛しく思いつつ、休ませていた手元を再び動かす。爪を立てて粒をひっかいた。
「ひっ!」
痙攣した弾みで離れたその唇から覗く名残惜しそうに伸ばされた舌を、今度こそ自ら噛みつくように捕らえる。
苦しそうに息を洩らしたが、三郎からの口腔への愛撫に微笑んだ雷蔵は再び腕に力を込めた。手は胸への刺激を止めないまま、雷蔵の好きな口蓋を擽る。二カ所からの甘い疼きに無意識に腰が揺らめいていた。すると唐突に重なっていた唇が離され、距離が生まれる。
「なにやっているの?」
「ふ、え・・・?」
なにと言われても雷蔵には何の心当たりもない。三郎はにこりと笑って、押し当てられていた熱を膝でにじった。
「ひゃあ、あっ!」
「いま自分で私の腿に擦り付けていたじゃない。触れてもらえないからって、こんな方法で自慰でもしようとしたんだ?」
はしたない。
耳元で、身体のその奥にまで届くように囁く。びくりと跳ねたその拍子に、未だ接触していた腿で再び刺激が生まれた。
「ふふ、そんなに私の足がいいの?でもダメだよ。今日はここには触れないままイってもらうんだからね。」
可哀想な可愛い雷蔵。首を一生懸命横に振りながら許しを請うている。けれどそれには応えないまま、三郎は彼の身体を起こし、背後へ回った。足を絡ませ閉じられないようにし、腕の下から手を胸に回す。ちょうど首元に触れた唇が、うなじの頭巾の結び目で隠れるかどうかという部分を強く吸った。
肩に顎を乗せ、手元を覗き込みながら両方を苛める。すでにぴんっと突きだしてしこりの出来た粒は、指の腹の下で面白いほど堅くなっていた。
「も、三郎やめろって・・・っ!」
「だーめ。もうちょっとだから、ね?」
未だ下帯さえ解かれていないそこは、きつそうに立ち上がって一部分、色が変わっていた。尻の割れ目にも食い込んでいるのがわかる。
「・・・っ、お前だって、もう限界なんじゃないのかっ!?」
挑発するように後ろへ体重をかけられ、圧迫される。雷蔵の腰にはすでに熱く立ち上がった三郎自身が押しつけられていた。
「ーーーっ、まだ大丈夫だよ。なに、意識して感じちゃったの?」
触れるだけだった熱さが指摘されたことで動き出す。腰の下部に押しつけるだけで肌にさえ触れていないというのに、その上下に擦られる感触に身体の奥を削られる快楽の記憶を取り戻してしまい、求めるように最奥が疼いた。
さらにその振動で身体が動き、床と下帯が擦れ合ってしまう。木綿の内側で触れてほしいと望んでいたそれが、少しの刺激も逃さずに拾い上げた。
「ふぅっ!あ、ぅ」
浅ましい、そう思うのに一度快楽を自ら生み出す方法を見つけてしまった身体は止まろうとしない。後ろに腰を押しつけ、尻を床に擦り付けるように身体が揺らいだ。
「あーあ、私の足がなくなったら今度は下帯?こんなので感じちゃうんだ雷蔵は。」
耳に歯を立てられ、次いでべろりと舐め上げられる。ふるりと震えて、胸を弄くっていた腕に爪を立てた。
「三郎、さぶろ、もっ、もう無理、イかせて・・・っ!」
身体の中を縦横無尽にかけ巡る出口のない熱の代わりのように、目から視界がなくなるほどの涙が溢れでてくる。ぼたぼたと滴が落ち、喉からは嗚咽がこぼれた。
止まらないそれに呼吸を繰り返して落ち着くしかなかったとき、胸の前で動きを止めていた腕が交差し、そっと抱きしめられた。
「ごめん、ごめん雷蔵、やりすぎたね」
「さ、さぶろ・・・っ」
イっていいよ、とわざと強く感じるように下帯の結び目をぐいっと引っ張りながら解く。足が痙攣した。
解いた下帯の下から溢れた先走りがとろりと糸を引く。しかし未だ達してはいなかった肉棒は、圧迫から解放されたことでふるりと頭をもたげた。
それに手を伸ばすと、その前に阻まれる。
「らいぞう?」
「前は、いい・・・」
でもつらいだろうと首を傾げると、髪が擦れ熱い吐息が零れる。しかし雷蔵は首を振った。
「それはいいから、・・・入れろ」
一瞬なにを言われたかわからなかった。けれど必死に首を後ろに向け、涙に塗れた瞳がこちらをねめつける。頭で音が意味をなしたとき、気づいたら先走りを拭っていた左手がその指をつっこんでいた。
おざなりに慣らして指を抜き去り肉棒をあてがう。ずさんなものだったというのに、そこはひくひくと物欲しそうに開閉した。
「ごめん、雷蔵。らいぞ、もう」
「うん、うん、いいよ、いいからっ」
はやく、という言葉が出るか否か。認識する前に熱が身体を切り開き、言葉はなにとも表さない声となった。痛みは感じたが、構ってなどいられなかった。
すべて収まりきった楔が頃合いをみて動き出す。卑猥な水音にしこりを穿たれる刺激、声がかすれて朦朧となってきた時、脳裏でぱちぱちとはじけ、意識は落ちた。
「今度こそ、胸だけでイこうね?」
腹に力を込めてみたが、効果はあっただろうか。
「絶対にいやだ!」
「えー?」
壁際まで追いつめられながらも断固拒否の体制で雷蔵は三郎をにらみつける。
「あんなこと二度とやるものか」
あんなこととはもちろん胸だけしか刺激を送られなかったという狂わしい一夜のことだ。実はあの後、雷蔵が気を落とした後も胸への愛撫は続けられ、空が白み再び意識が戻ったとき、己の胸は痕やらなにやらで真っ赤に染まり、自身はといえば解放されるのをいまかいまかと待ちわびていた。あまりにもゆるやかな身体の変化に意識が拾うことはなかったらしい。結局その後も受け入れることとなった。
「まああわてなくても。確かめるだけだよ。」
「確かめる?なに・・・ひゃあ!?」
伸びた腕がおもむろにはずすことなく突起が隠れている布地をひっかく。自分でも信じられないほど身体が反応した。
「うん、いい感じ。身体は覚えてくれたみたいだね。」
ここが気持ちいいんだってことを。一晩掛けた甲斐があったよ。
にこりと微笑む顔が恨めしい。
けれどもう胸だけを愛すことはしないよなんてバカなこと囁く声に、それでもつい許してしまう自分の方が恨めしかった。
09.08.06.
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